卒業以来、久しぶりに同窓会に顔を出す60代の皆さん。着物姿で参加する機会はめったにないからこそ、会場にふさわしい華やかさと自分らしさを両立させたいはずです。
本記事では、シニア世代の女性が同窓会で上品に着物を着こなすためのポイントをご紹介します。具体的には会場や季節に合わせた着物の選び方、柄や色の選び方、帯や小物のコーディネート、レンタルや購入の準備、着付けマナーなど、60代ならではの着物スタイルを完成させるヒントが満載です。ぜひ参考にしてみてください。
目次
60代が同窓会に着物で出席する際の基本ポイント
まずは同窓会の開催場所やドレスコードを確認しましょう。高級ホテルのパーティーのようなフォーマルな会場では略礼装相当の着物、居酒屋やレストランのカジュアルな会場なら少し気軽な着物を検討します。季節や天候も大切な要素です。暑い季節であれば薄手の単衣や麻着物、寒い季節であれば裏地付きの袷(あわせ)の着物を選んで快適に過ごせるようにします。
また、自分の体型や好みも意識します。体型を補正して見せられる柄選びや、顔映りのよい色合いを考えることが大切です。予算や着付けの準備方法(手持ちの着物でまかなうかレンタルにするか)も早めに検討して計画的に準備しましょう。
同窓会の会場とドレスコード
同窓会の行われる場所に合わせて、着物の格式を選びます。ホテルの立食パーティーや式場のような厳かな会場では、訪問着・付け下げ・色無地など略礼装に当たる着物がふさわしいです。一方で、気軽な料亭や居酒屋での集まりなら、小紋・紬などのカジュアルな着物でも好印象です。会場に合わせたおすすめの着物例を以下にまとめました。
会場 | おすすめの着物 |
---|---|
ホテル(格式高いパーティー) | 訪問着・付け下げ・色無地 |
レストラン・料亭など | 付け下げ・色無地・江戸小紋 |
居酒屋・カジュアルな会場 | 小紋・紬・カジュアル訪問着 |
会場の情報がわからなければ、告知された会場名で検索したり、主催者にドレスコードを直接問い合わせるのもおすすめです。TPOに合わせて準備すれば、安心して同窓会を楽しむことができます。
季節と天候に合わせた着物選び
同窓会の開催時期や当日の気候に合わせて、着物の仕立てを変えます。暑い初夏・盛夏なら、裏地のない単衣や麻・絽(ろ)の着物で涼しく、寒い秋冬なら二重仕立ての袷着物で暖かく過ごします。近年は気温上昇の影響で夏でも快適な化繊や特殊な織物も登場していますので、暑がりの方はそうした素材を選ぶとよいでしょう。
雨天の場合は生地が雨に強い「洗える着物」や合繊素材を選ぶのもひとつの手です。どの季節でも、自分が着心地よく、かつ周囲にふさわしい着物を選ぶことが大切です。
同窓会にふさわしい着物の種類と格
着物にはフォーマルからカジュアルまでさまざまな「格」があります。同窓会の雰囲気に合わせて適切な格の着物を選びましょう。フォーマルな会合では訪問着など略礼装に当たる着物、カジュアルな集まりなら小紋や紬などの普段使いの着物も候補になります。
訪問着・付け下げ・色無地の特徴
訪問着、付け下げ、色無地は略礼装にあたる格式高い着物です。訪問着は裾や袖に豪華な模様が続く華やかな着物で、結婚式やパーティーでも用いられます。付け下げは訪問着より柄が控えめで上品さがあり、60代でも使いやすいデザインです。色無地は無地の着物で、帯次第で礼装にも変更にもなる万能型。3つとも同窓会のような略礼装を要する場では安心して着用できます。
振袖・留袖の年齢適合性
振袖は未婚女性の第一礼装であり、一般的に60代の同窓会では着用しません。留袖は既婚女性の第一礼装ですが、主に親族の婚礼など限られた場面で着用するものです。同窓会では念のために形式の高い着物を避けるか、訪問着クラスであれば問題ありません。特に還暦祝いなど祝いの日には赤い色無地でお祝いすることがありますが、通常の同窓会では振袖・留袖以外の着物をおすすめします。
小紋・紬:カジュアル着物の選び方
小紋や紬は普段着感覚のカジュアルな着物です。居酒屋や友人宅などリラックスした雰囲気の同窓会なら、このような着物でも良いでしょう。ただし年齢を重ねた装いでは落ち着いた上品さも大切です。例えば、派手すぎない江戸小紋や深い色合いの紬、抑えた柄行きの小紋などを選ぶと地味になりすぎず華やかさも演出できます。
60代に似合う着物の柄・色の選び方
柄や色使いは着物全体の印象を左右します。60代は若々しい原色よりも、落ち着いた色味をベースにして上品さを出すのがポイントです。着物自体は抑えた色調にし、帯や小物で華やかな差し色を取り入れると格好良くまとまります。以下のポイントを参考に、色柄選びのコツを押さえましょう。
落ち着いた色味で上品に見せる
チャコールグレーや深紺、渋い紫色など落ち着いた色合いは肌も穏やかに見せてくれます。真っ黒や真っ白より、少し彩度を抑えたグレーやベージュ系、藍色などを選ぶと柔らかい雰囲気になります。柄も大きすぎない落ち着いたものがおすすめです。小柄な花模様や市松模様などが遠目にも上品に映ります。
近年では、京都・西陣の織物業界でAI技術を取り入れた新柄の開発が進められており、伝統的な色柄に加えて現代風にアレンジされたデザインも増えています。こうした新柄から選べば、時代に合った上品な組み合わせが楽しめます。
アクセントカラーで華やかさをプラス
落ち着いた着物には、帯や帯締め・帯揚げで華やかな色を足すと同窓会らしい華やかさが出ます。例えば紺やグレーの着物には朱赤や金色、紫などの帯を合わせると映えます。帯揚げや半衿で淡いピンクやクリーム色を使うだけでも顔まわりが明るくなり、写真写りも良くなります。岩絵具を配した刺繍や金彩が入った帯締めをポイントにすると、一層エレガントな印象になります。
還暦祝いなら赤色も選択肢
60歳の還暦祝いでは「赤いちゃんちゃんこ」の伝統にならい、赤系統の着物を選ぶ方も増えています。深紅やえんじ色など落ち着いた赤なら、年齢相応の華やかさが演出できます。真っ赤よりもやや深みのある色を選び、帯や小物は金色やクリーム系など浮かない明るさの差し色にするとバランスが良いでしょう。
帯や小物で華やかさをプラスするコーディネート術
着物の格を決める上で重要なのが帯や小物選びです。帯の種類や結び方、草履やバッグ、アクセサリーのコーディネートで印象が大きく変わります。ここでは帯・小物・ヘアメイクそれぞれのポイントを解説します。
袋帯と名古屋帯:用途に合わせて
帯はフォーマル度の高い袋帯と、普段着に近い名古屋帯があります。フォーマルな訪問着には袋帯を合わせるのが一般的ですが、付け下げや色無地には名古屋帯でも違和感ありません。同窓会では略礼装~セミフォーマルなので、袋帯でも名古屋帯でもどちらでもOKですが、60代はあまり華美になりすぎないよう意識すると安心です。例えば、模様入りの袋帯を選ぶ場合は紺やグレー系など落ち着いた地色のものが大人っぽくまとまります。帯の結び方では、お祝いらしく文庫結びや立て矢結びといった華やかな形を選ぶと華やかさが増します。
帯締め・帯揚げで個性を演出
帯締めや帯揚げは着こなしのアクセントになります。帯揚げは半襟と同じ色味でまとめると統一感が出ますが、あえて帯締めで差し色を入れるとおしゃれ度がアップします。例えば、着物と同系色の帯締めで落ち着かせるか、紅色や金色の帯締めで目を引くコントラストをつけるかで印象が変わります。帯揚げを二色使いにしたり、絞りや刺繍が入った帯締めを使うのも粋な選び方です。
草履・バッグ・小物の選び方
足元とバッグは全体のバランスを整える重要な小物です。草履は着物と同系色でまとめるのが無難ですが、色が沈みすぎる場合は黒・紺の無地にしても大丈夫です。草履はフォーマルなら刺繍や金刺しゅうのあるもの、少しカジュアルな場面なら無地やシンプルな柄のものがおすすめです。バッグは小ぶりな和装バッグを選び、草履と色を合わせるか、帯の色にリンクさせると統一感が出ます。装飾控えめの着物なら、パールやビーズが付いたハンドバッグで女性らしさを添えるのも素敵です。
ヘアメイクで全体を引き締める
着物姿に映えるヘアスタイルとメイクも欠かせません。60代は若作りより自然な華やかさを意識すると上品です。髪型はショートヘアの場合、内巻きカールで丸みをつけると優雅な印象に。アップスタイルなら簪(かんざし)や小さな飾りで顔周りに色を足します。メイクはベースをナチュラルに整えつつ、口紅やチークで血色を補いましょう。彩度の高い赤よりは落ち着いたローズ系やコーラル系の口紅が顔映りよく仕上がります。パールのイヤリングやネックレスなら、着物の格を損なわず上品さをプラスできます。
着物の準備方法:レンタルと購入のメリット比較
着物を用意する方法には、手持ちのものを使う、レンタルする、新調(購入)するの3パターンがあります。それぞれにメリット・デメリットがあるので、予算や頻度に合わせて選びましょう。レンタルは初期費用を抑えられ、着付けに必要な帯や小物がセットになっているのが特徴です。購入・所持の場合は自分に合うサイズが使え、何度でも着回せるのが利点です。以下に主な特徴をまとめました。
レンタルと購入:メリット・デメリット比較
メリット | デメリット | |
---|---|---|
レンタル | 最新のデザインが手軽に着られる 帯や小物がセットになっている |
サイズや色柄が合わない場合がある 汚れや破損に注意が必要 |
購入・既存 | 自分の体型にフィットする着物を着られる 何度でも着回せ経済的 |
購入費用・保管コストがかかる 管理・クリーニングが必要 |
レンタルは手軽で慣れない方にも安心ですが、返却時の状態には気を付けましょう。購入や手持ちの場合は寸法や痛みを事前にチェックし、必要があれば仕立て直しやクリーニングを済ませておいてください。
着物のクリーニングと点検
購入またはレンタルを問わず、同窓会前には着物や帯を点検しましょう。シミやほつれがないか、帯締め・帯揚げが揃っているか、草履やバッグの状態は問題ないかを確認します。不安があればプロにクリーニングや補正を依頼しておくと安心です。古い着物を再度着る場合は反物の耳やくけのほつれチェックも忘れずに。
着付け・ヘアメイクの手配
着物に自信がなければ、着付け専門店や美容室でプロに着付けを依頼すると安心です。料金は5,000〜10,000円程度ですが、着崩れせずきれいに仕上がり写真映えも良くなります。ヘアセットも同時に頼めるお店が多いので、セットで予約しましょう。逆に、自分で着付けできる方は事前にリハーサルしておき、当日は慌てないようにしましょう。
同窓会当日の着付けとマナー
着物は礼儀作法もポイントです。60代で着慣れていなくても、下記のポイントに気をつければ着付けたままでも安心して振る舞えます。当日の着付け後から会終了までの過ごし方のコツをご紹介します。
食事中の所作:袖と帯に注意
テーブルで食事をする際、着物の長い袖がテーブルに垂れないよう注意しましょう。袖を内側に折り込んで袂(たもと)を狭めたり、上着で軽く袖を押さえたりします。また、ナイフやフォーク、取り皿の扱いで袖を引っかけないよう、袖が広がらない位置に手を置きます。帯は前で結んでいるので、椅子に座るとき背もたれに帯を当てて帯結びを保護すると着崩れしにくいです。
姿勢と歩き方:背筋を伸ばして
着物姿では立ち居ふるまいが美しく見えるよう心がけます。背筋をまっすぐ伸ばし、腰から上は左右に揺れないように歩き、歩幅は小さめにすると上品です。歩くときはつま先を外に少し向けると裾さばきがよくなるのでおすすめです。椅子に座るときは帯が潰れないよう浅めに腰掛け、膝は揃えてそろりと横に下ろします。写真を撮る時はあごを軽く引いてカメラを見ると、自然で落ち着いた表情になります。
気候対策:塵よけコートを活用
春先や秋口の同窓会なら塵よけ(ちりよけ)コートやショールで防寒対策をしましょう。塵よけコートは着物をホコリから守り、風よけにもなります。寒い季節は着物の上に羽織り物を一枚羽織っておくと安心です。外を移動する際、バッグで着物の裾を押さえる、階段では裾を踏まないよう裾を上げるといった細かい心配りも大切です。また、足元が冷えるときは足袋の中に薄手の靴下を履くことで快適に過ごせます。
まとめ
同窓会は昔の仲間と再会し想い出を語る大切な場です。60代ならではの品格と季節感を意識して着物を選べば、いつもとは違う華やかな自分を演出できます。会場の格式や季節に合った着物と帯、小物をバランス良く組み合わせ、ヘアメイクも整えることで上品なコーディネートが完成します。レンタルやプロの着付けを上手に活用し、当日も背筋を伸ばして丁寧な所作を心がければ、素敵な着物姿で同窓会を満喫できるでしょう。今回ご紹介したポイントをぜひ参考に、60代の新たな魅力を着物で再発見してください。