着物にショールを合わせると、華やかさと暖かさをプラスできますが、特にフォーマルな場ではマナーや着こなしに迷うこともあります。
結婚式や茶席などでは、室内でショールを外すタイミングや、素材・色選びのポイントが大切です。
本記事では、着物でショールを使う際の基本マナーや上品な羽織り方、シーン別の注意点をわかりやすく解説し、美しい着こなしのコツや選び方もご紹介します。また初心者でも安心して実践できるよう、ポイントを丁寧に解説します。
着物に合うショールの基本マナー
着物にショールを合わせる際は、ショールの役割や着用シーンを理解することが第一歩です。
ショールは元々防寒具として使われる和装アイテムで、着物に華やかさを添える装飾品でもあります。
ただし、どの場面でも自由に使っていいわけではなく、特に室内やフォーマルな場面では取り扱いに決まりがあります。
例えばショールは洋服のコートと同じように扱い、屋外では肩に掛け、室内に入る前には必ず外すのが大前提です。
また、ショールを羽織るときや外すときの所作にも気を配りましょう。
ショールの端が床に触れないように取り扱い、人目につく所作でも美しさを意識することで、周囲に品の良さを印象付けます。
基本マナーを押さえておくと、どのようなシーンでも安心してショールを活用できます。
ショールは屋外で羽織り、室内では外す
ショールはあくまでも洋服の「コート」と同じ防寒具と考え、屋外で羽織って室内に入る際は必ず外すのが基本マナーです。
結婚式や披露宴、茶会などの場では特に重視され、式場や会場に入る前に受付を済ませてからクロークに預けておきましょう。
ショールを着けたまま室内で過ごすと、格式をわきまえないと見なされることもありますので注意が必要です。
屋内で外したショールは、両手で優しく畳んでバッグにしまうか、膝の上に置くなどして清潔に扱いましょう。
畳むときは縦に半分に折り、次に横に数回折りたたむとコンパクトになります。
端が床に触れたり通行人の邪魔になったりしないよう配慮するのもエレガントな所作です。
ショールの美しい羽織り方・外し方
ショールを羽織る際は、広げる動作を最小限にして優雅に行います。両端を両手で持ち、肩のラインに沿わせるようにゆっくりとかぶせましょう。
まず片方の端を肩に置き、続いてもう一方を肩の後ろまたは前に流すように整えます。こうすることで着物の襟元が崩れにくく、全体のバランスも保てます。
袂の中にショールを入れ込まず、体の前で軽く押さえる程度に留めると、落ち着いた上品な印象になります。
取り外すときも同様に優雅に動作を行いましょう。
肩からショールを滑らせるように静かに下ろし、片方の手でショールを押さえながらもう一方の手でゆっくり引き抜いてください。
このとき帯結びを崩さないよう、ショールの端が衣装に引っかからないか気をつけると良いでしょう。
ショールの持ち方とたたみ方
外したショールは、きちんと折りたたんで持ち歩くのがマナーです。
ショールを持つときはまず縦に半分に折り、さらに横方向にも数回折りたたみます。
これで腕に掛けても落ちない大きさに整え、左腕に掛けておくと両手が自由になり所作が美しくなります。
ショールを肩から掛けたまま歩くときも、端がブラブラしないよう気をつけましょう。
椅子に座ったときは、畳んだショールを膝の上に置きます。
椅子の背もたれに掛けると滑り落ちてしまったり、隣席の方の邪魔になったりするリスクがあるため避けましょう。
ショールを膝掛けにして使用する場合は、親しい間柄やカジュアルな場面に限るのが基本です。
ショール用留め具の使い方
基本的にはショールは固定せずそのまま羽織るアイテムですが、風が強い日や両手を空けたいときは留め具を使っても差し支えありません。
ブローチやクリップで留める場合は、小さめで上品なデザインを選びましょう。洋風の大きな留め具は着物には不釣り合いなので避け、控えめなアクセントとして使います。
帯留め用のクリップなど帯に引っ掛けるタイプの留め具も市販されており、ショールがずり落ちるのを防げる便利なアイテムです。
ただしフォーマルな場ではあくまで簡素なものにとどめ、キラキラの装飾や派手なものは避けましょう。留め具を使うときは、いざというときの補助と考え、普段は羽織るだけでエレガントに見せるのが理想的です。
シーン別:着物でショールを使うときのマナー
着物にショールを合わせる際は、シーンやTPOによって最適な方法が異なります。たとえば結婚式やお茶会、観劇や食事会では求められるマナーも変わってきます。
この章では、代表的なシチュエーション別にショールの正しい扱い方を解説します。シーンごとのポイントを知っておけば、慌てることなく上品にショールを使い分けられます。
結婚式・披露宴でのマナー
結婚式や披露宴でショールを使う場合、まず式場に入る前にショールを外すことがマナーです。
式典ではショールはあくまで屋外での防寒具とされるため、受付前に下ろしてクロークに預けます。
屋内でショールを羽織ったまま挨拶や写真撮影をするのは、フォーマルな場ではマナー違反と見なされることがあります。
また、素材選びには特に注意しましょう。お祝いの席では動物の毛皮を連想させるリアルファー(本物の毛皮)は敬遠され、フェイクファーでも避けたほうが無難です。
代わりにシルクやカシミヤ、ベルベットといった上品な素材を選ぶと良いでしょう。クロークに預ける際はショールを畳んでコンパクトにまとめ、汚れがつかないようにしてから預けると気配りのあるマナーになります。
お茶会でのマナー
茶道の席ではショールも外出着の一部として扱われます。茶室は屋外のほこりを持ち込まない清浄な空間とされているため、待合や席入り前にショールを必ず脱いでおきます。
畳んだショールは風呂敷に包むか大きめの袋に入れて他の荷物と一緒に扱い、茶室内には持ち込まないようにします。
素材選びも大切で、毛羽立ちやすいウール・アンゴラ・モヘアなどは避け、毛羽の少ないシルクやカシミヤ、上品な麻(薄手のリネン)などを選びましょう。
織り目が粗かったり飾りが多いショールは茶室内でほこりや花粉を落としやすいため控えるのがベターです。
観劇・食事会・お出かけでのマナー
観劇やコンサート、お食事会、ショッピングなどカジュアルなお出かけでは、フォーマルほど厳格なルールはありませんが、周囲への配慮は大切です。以下の点を参考に、場面に合わせてショールを使いましょう。
- 観劇・コンサート:劇場ロビーでショールを外し、クロークがあれば預けます。席ではショールを膝の上にたたんで置き、後ろの人の視界をさえぎらないように注意しましょう。
- 食事会:店内に入る前にショールを外し、きれいに折りたたんで椅子の背もたれに掛けるか膝の上に置きます。冷房で寒いときだけ膝掛けにしても構いませんが、食べこぼしや汚れに注意が必要です。
- お出かけ・買い物:混雑時は動きやすさを考えてショールを畳み、バッグに入れておくと安心です。両手がふさがる場合は、ショールクリップや帯留めを使って軽く固定してもよいでしょう。
着物でショールを美しく着こなす方法・所作
ショールは着物のコーディネートに華を添えるアイテムです。ただ羽織るだけでなく、所作一つで印象が大きく変わるのが特徴です。
この章では、ショールをより美しく身につけるポイントや、さらにおしゃれに見せる着こなしのコツを紹介します。
美しい羽織り方のポイント
ショールを羽織る際は、広げてから大きくかぶせるのではなく、両端を持って肩に滑らせるようにすると自然な仕上がりになります。
まず一方の端を肩に掛け、続いてもう一方を肩の後ろまたは前に流すように整えます。こうすることで着物の襟元が崩れにくく、全体のバランスも保てます。
袂の中にショールを入れ込まず、体の前で軽く押さえる程度に留めると、落ち着いた上品な印象になります。
ショールの正しい外し方とたたみ方
外すときも優雅に動作を行いましょう。肩からショールを滑らせるように静かに下ろし、片方の手でショールを押さえながらもう一方の手でゆっくり引き抜いてください。
このとき帯結びを崩さないよう、ショールの端が衣装に引っかからないか気をつけると良いでしょう。
外したショールはたたんで持ち歩くのがスマートです。まず縦に半分に折り、次に横方向にも数回折りたたんで片腕に掛けられる大きさに整えます。
席に着いたら折りたたんだショールを膝の上に置き、椅子の背に掛けないようにすると所作が美しく見えます。
ショールで着物を華やかに演出するコーディネート
着物とショールの組み合わせでは、色や柄のバランスがポイントです。着物の地色や柄から一色を取ってショールに使うと、全体がまとまって上品に見えます。
例えば柄物の訪問着には、着物に含まれる淡い色合いのショールを合わせると良いでしょう。無地または地味な着物には、柄や鮮やかな色のショールでアクセントを加えると華やかになります。
また、ショールの質感も重要です。光沢のあるシルクやリネン混紡など、質感の異なる素材を選ぶと装いに奥行きが出ます。最後にショールの両端を左右均等になるよう整えて肩に載せると、前から見たときにバランスが良くなり、より美しいシルエットになります。
着物ショールの選び方:色と素材でコーディネート
ショールを選ぶ際は、着るシーンや着物の格に合わせた素材・色を選ぶことが大切です。フォーマルな場では上質で落ち着いたショールを、カジュアルシーンでは季節感や個性を反映したショールを選びましょう。
ここではTPOに合わせたショールの選び方と、季節ごとのおすすめポイントをご紹介します。
フォーマルな場に適した素材と色選び
結婚式や式典では、フォーマル度の高い素材を選ぶことがポイントです。例えばシルクやカシミヤ、ベルベットなど滑らかで高級感のあるものが適しています。
色は着物の雰囲気に調和させるのが基本で、着物の地色や柄に含まれる色味から淡い同系色を選ぶとまとまりが生まれます。パステル調やクリーム色など優しい色合いのショールは、着物の華やかさを引き立てつつさりげなく馴染みます。
柄物のショールは、ラメ糸や金銀糸刺繍など上品な装飾が入ったものならフォーマルにも使えます。ただし派手な大柄よりも小さめの柄や控えめな刺繍を選ぶのが無難です。本物の毛皮は殺生を連想させるためマナー違反となるので、フォーマルでは必ず避けましょう。
カジュアルな着物に合うショールの選び方
普段のお出かけや街歩きでは、和服スタイルにも遊び心を取り入れたショールを選びましょう。ウールやコットン、麻(リネン)など温かみや爽やかさを感じる素材がマッチします。
着物が無地の場合は柄のあるショールで色を足し、柄物の着物には無地や細かい柄のショールで引き算するとバランスが取れます。
例えば、秋冬にはタータンチェックやチェック柄のウールショール、春には淡い花柄や薄手のシルク混紡のショール、夏には白や薄青の麻(リネン)ショールを合わせると季節感が出ます。
カジュアルな場面では、あえて反対色で差し色にするのも素敵です。ただし全体のトーンがケンカしないように配色することが大切です。
季節別におすすめのショール
季節ごとに選びたいショールの色や素材のポイントは以下の通りです。
- 秋~冬:こっくりとした深みのある色(ボルドー、深緑、紺色など)と暖かみのある素材(カシミヤ、ウール、ベルベットなど)を選びましょう。
- 春:淡いパステルカラー(桜色、薄紫、水色など)や花柄が春らしく、素材は薄手のカシミヤやシルク、コットンシルクなど軽いものが適しています。
- 夏:涼感のある白や淡い水色、レースや麻(リネン)、絽(ろ)・紗(しゃ)など透ける素材が夏の装いにぴったりです。綿麻のショールで涼しげな印象を演出しましょう。
まとめ
着物にショールを合わせる際は、まずショールが屋外用の防寒具であることを念頭に置き、室内では外すことが鉄則です。またフォーマルシーンでは高級感のある素材を選び、リアルファーや派手な装飾は避けましょう。
ショールを羽織るときや外すとき、そして畳むときの所作を丁寧に行えば、着物姿はより華やかで上品になります。ここでご紹介した基本のマナーやコーディネート術を参考に、TPOに合わせてショールの着こなしを楽しんでください。