卒業式や武道の場などで袴を着る時、ふと脇の部分が開いて中の着物や肌が見えてしまうことがあります。この状態に驚いて「着付けが間違っているのでは?」と心配する方も多いでしょう。しかし実は、袴はデザイン上どうしても脇が開く構造なのです。この記事では、袴の脇が開く理由と、見えすぎを防いで美しく着こなすコツを解説します。
袴を正しく着たい方は必見です。
目次
袴の着付けで脇が見える原因と対策
袴は前後に分かれた構造で、動きやすさや涼しさを重視してあえて脇が開いたままになっています。そのため、特に袴の下に着る着物(襦袢など)が重なる部分「おはしょり」が短いと、脇から中の着物が見えやすくなります。また、着付けの際に腰紐や帯を締める位置や強さが不十分だと、袴の裾が身体にぴったり寄らずに脇にすき間が生じます。
逆に、袴のサイズが大きい場合も脇が目立ちやすい原因です。例えば身長に比べて裾が長すぎたり、腰回りに余裕がありすぎると、動いた拍子に脇が大きく開いてしまいます。
一方で、あまり神経質になる必要もありません。適切なサイズで着付けられていれば、ある程度の脇の開きは普通です。下着や長襦袢の端が目立たないように工夫すれば見た目もきれいになります。
袴の脇あき構造とは
そもそも袴はその構造上、脇が開くように作られています。腰から腿にかけてゆったりした布地になっていて、前見頃と後見頃が左右でつながっていません。この開いた部分を「脇あき」と呼びます。もともと武士の制服だった袴は、動きやすさを重視したデザインです。実際、かつては刀を差したり馬に乗ったりする場面もあったため、脇がしっかり開いている方が実用的でした。
現代でも袴はその伝統的な形を受け継いでいるため、どうしても動くと脇あき部分が開きます。着物の世界では袖を高く上げる動作が少ないようにするだけでなく、あえて着物の着丈を長めにして裾から覗くおはしょりで脇あきを隠す工夫がされてきました。
つまり、「脇が開く=着付けが間違っている」というわけではなく、袴本来の機能と歴史的背景によるものだと理解しましょう。
着付けや体型で脇が開く原因
袴の脇あきが目立つ条件としてサイズと着付け方法が挙げられます。まずサイズ選びでは、身長に対して袴が長すぎたりウェストが緩すぎると裾が重くなり、脇あき部分に余裕が生まれます。とくに腰紐や伊達締めなどの下着がきちんと締まっていないと、袴全体がズレて脇に隙間ができてしまいます。また、袴下帯(袴の帯)の締め方も重要です。帯を緩く巻いたり下がってしまうと、袴が安定せずに脇が開きやすくなります。
一方、体型によっても見え方は変わります。身長が低く胴回りが太めの場合、通常の腰骨付近で帯を結ぶと上着の丈が短くなるため、脇から太腿が見えやすくなります。このような方は、少し高めの位置(腰より上)で帯を結ぶと脇の開きを抑えられます。他にも骨盤が張っている、スタイルが細め・ぽちゃっとしているなど、個人差がありますが、基本的には自分の体型に合ったサイズを選び、着付けでしっかり固定すれば脇の見え方を軽減できます。
帯や腰板、小物で脇を隠す方法
脇の開きが気になる場合の対策として、帯や付属の小物を活用しましょう。まず帯は、前で結ぶときにしっかりと固く締めることが大切です。しっかり腰回りを支えれば、袴がずれにくくなります。また、男性用袴に付いている腰板(こしいた)は姿勢を支える板状のものですが、袴の裾を身体に密着させる役割も持っています。腰板を使うと袴の裾が固定されやすく、結果として脇あきも安定します。
実際の対策例としては以下のようなものがあります:
- 腰紐や伊達締めで袴の上部を固定し、動いてもずれないようにする
- 腰板のない女性袴は、帯をやや高めの位置で締めて袴を安定させる
- 裾よけや補正パッドを使い、おはしょり部分を厚めにして脇からの見え方を防ぐ
これらを組み合わせて、袴と着物のズレを最小限に留めることで、脇が大きく開かずに落ち着きます。
おはしょりでカバーするテクニック
もう一つの方法は、着物の余り(おはしょり)を活用することです。おはしょりは着物の裾を折り返した部分で、袴の脇から下着が見えないようにする役割があります。着付けの際におはしょりを少し長めに取って遠方にたくし上げ、左右均等に整えることで、袴の脇あき部分から下着がちらりと見えるのを防げます。
具体的には、着物を着た後に体側に沿わせて前後にしわや余りを寄せ、体の側面を覆うように半分ずつ重ねると良いでしょう。そのうえで粗襟を少し抜いて襟元を整え、腰紐や伊達締めをしっかり締めてからもう一度左右のしわを伸ばします。この工程を丁寧に行うと、袴をはいても背中や脇の内側から下着が見えるリスクが減ります。
正しい袴の着付け:脇を隠すテクニック

袴の着付け全体を通して、脇の開きを防ぐポイントはいくつもあります。まず、長襦袢や裾よけなど着物類は、体型に合わせてしっかり補正をしておくこと。腰回りが太めの方はタオルや専用の補正具で形を整え、腰ひもが緩まないようにします。息を吐いた状態で帯を締めると締め付け感が和らぐため、腰紐を巻く際は一度深呼吸してから締めると良いとされています。
帯の結び方も重要です。袴下帯を締めたら、上前(前見頃の裾)を引き上げて着物を脇からはみ出させないようにしっかり固定します。その上から袴の帯で前見頃を押さえ込むイメージで結びましょう。特に女性は胸下で結ぶ胸高(むなだか)帯が一般的ですが、写真撮影で正面から映る部分を美しく見せつつ、脇から見たときに過度に隙間ができないようバランスを取ることが大切です。
また、袴をはく際には裾を膝までたくし上げ、膝で軽く抑えてから帯を締めると丈が安定します。最後に仕上げに両手で裾を整えて、袴の左右差がないか確認することも忘れずに。これらの手順を踏むことで、袴姿はぐっと引き締まり、脇からのぞく見え方も落ち着きます。
体型・サイズ別の対策:袴の脇が開かないコツ
袴を美しく着こなすには、自分の体型に合ったサイズ選びが欠かせません。袴の長さは立ち姿のくるぶしがほんの少しだけ見える程度が目安です。もし裾が長すぎる場合は、腰板を使ったり袴を折り返したりして長さを調整しましょう。また、腰回りのサイズは実際のウエストより少しゆとりを持たせたものを選びます。着付け中に実際の腰骨付近で腰ひもをしっかり締め、お尻の上あたりでキープするのが基本です。
特に身長が低い方やふくよかな体型の方は注意が必要です。前述の通り、小柄な方は袴帯を通常よりも高い位置で結ぶと脇あきが改善されます。例えば着物の裾を通常より下に絞り、帯をウエスト周辺で締めると、袴の脇から下着や太腿が見えにくくなります。ただしその場合、裾が短くなって足首が露出するので、袴丈はやや短めを選ぶなど調整が必要です。
他にも補正アイテムを使う方法があります。腰にタオルや専用の補正ベルトを巻いておくと、お腹周りが安定して袴がずれにくくなります。さらに、足さばきを工夫するだけでも見え方は変わります。袴をはくと歩幅が小さくなりがちですが、両足を並べて立った時に太腿が互い違いにならないよう気をつければ、脇からのぞく隙間を少なくできます。
男性袴と女性袴の違い:脇あきの構造と着こなし
男女で袴の構造に違いがあることも押さえておきましょう。男性用袴は「馬乗り袴(うまのりばかま)」と呼ばれ、股に仕切りがあるためパンツのような形状をしています。一方、女性用袴は「行灯袴(あんどんばかま)」といい、完全にスカート状に見えるデザインです。行灯袴には股の仕切りがなく、裾が台形に広がるため、股下を跨ぐ動作に制限はありません。これらの違いから、開き方にも差が出ます。
男性袴は腰の位置で帯を締め、背面に腰板が入っているのが特徴です。腰板に芯が入っていると袴がパリッと安定し、横から見た時のシルエットが美しくなります。女性袴は帯を胸下の位置で締め、腰板は入っていません。腰回りの締め付けを胸高に分散させることで動きやすく、圧迫感が少ない設計になっています 。
この違いは、脇の見え方にも影響します。男性袴は腰板が袴を支えるため脇に大きな余裕は生じにくいですが、女性袴は重みで裾が広がりやすい分、着付けで注意が必要です。例えば女性が男性用袴を着る場合、帯の位置がずれて見えることもあるので、男性も女性用袴を着るときも、それぞれの締め方を踏襲すると良いでしょう。
また、歴史的な背景としては、かつては男女とも馬乗り袴を着用していましたが時代と共に女性には行灯袴が一般的になりました。現在では性別による厳格な使い分けはないため、男性が行灯袴を選んだり女性が馬乗り袴を着ることも問題ありません。いずれにせよ、袴の「脇あき」は動きやすさのための仕様ですので、男女どちらの場合も正しく着付けていれば気にする必要はありません。
まとめ
袴の脇が見えるのは、構造上どうしても起こり得る現象です。実用的な理由で脇が開いたままになっているので、まずは落ち着いて着付け全体をチェックしましょう。正しいサイズ選びと着付けを行い、腰紐や帯、着物の合わせ方を工夫すれば、脇の見え方は大きく改善できます。特に体型や着付け位置を工夫することで、太腿や下着が目立つのを防げます。
日常の式典で着慣れていないと不安になるかもしれませんが、袴は正しく着れば美しい装いです。今回の記事で紹介したポイントを参考にすれば、自信を持って袴姿を楽しめます。