結婚式や式典で色留袖を選ぶとき、もっとも迷いやすいのが五つ紋と三つ紋のどちらにするかという点です。紋の数は装いの格をはっきり示し、ふさわしい場面や合わせる帯・小物まで左右します。本稿では、五つ紋と三つ紋の違いを軸に、黒留袖との位置づけ、具体的な着用シーン、紋の入れ方や比翼の有無、帯や小物の格合わせまでを体系的に整理。初めての方にも経験者にも役立つ実践的な判断基準をお伝えします。
迷いなく最適な一枚を選ぶための最新情報です。
目次
色留袖の五つ紋と三つ紋の違いを一目で理解
色留袖は地色が黒以外で、裾模様が主の礼装着です。五つ紋と三つ紋の違いは、単なる装飾ではなく公的な格の差を表し、着用できる場面や求められるマナーを分けます。五つ紋は最上位の礼装に相当し、三つ紋はその一段下の準礼装の最上位帯域に位置します。さらに同じ色留袖でも比翼の有無や紋の種類によって微調整が可能です。
まずは五つ紋と三つ紋の基本的な序列、黒留袖との関係、そして現代の式典における使い分けの全体像を押さえることが、失敗しない選びの第一歩になります。
なぜ紋の数が重要なのか
紋は家のしるしであると同時に、礼装の格を可視化する装置です。五つ紋は背・両胸・両外袖の五か所に入り、最も改まった意思表示になります。三つ紋は背・両外袖の三か所で、格式は保ちながらもやや柔らげた印象。式場の案内や主催側のドレスコードが曖昧でも、紋の数を上げ下げすることで相手に過不足のない敬意を伝えられます。
同じ柄行の色留袖でも、紋の数次第で許容される帯や小物の格、比翼の要否が変わるため、最初に紋数を決めることが実務面でも合理的です。
黒留袖との違いも含めた位置づけ
黒留袖は既婚女性の第一礼装の定番で、五つ紋が基本。色留袖は地色があるため華やぎが出せる一方、紋の数で黒留袖に近い格にも調整できます。五つ紋の色留袖は黒留袖とほぼ同格に扱われる場面もあり、三つ紋は親族ゲストや主賓など立場に応じて幅広く対応可能。
ただし婚礼の新郎新婦の母の装いは地域差があり、黒留袖を推す会場もあります。色留袖を選ぶ場合は、相手方や会場と事前に摺り合わせるのが安心です。
紋の数と格式の関係を正しく押さえる

格式は 上から 五つ紋 盲点になりやすいのが 紋の種類 と 比翼の有無 です。五つ紋であれば染め抜き日向紋が原則で、白比翼を付けると婚礼級の厳粛さに。三つ紋は染め抜き日向紋が理想ですが、場面により縫い紋も許容されます。帯は両者とも袋帯が標準、五つ紋では丸帯相当の格調や格高の織りを選ぶと安心です。下の表で要点をまとめます。
| 項目 | 五つ紋色留袖 | 三つ紋色留袖 | 一つ紋色留袖 |
|---|---|---|---|
| 格式 | 第一礼装相当 | 準礼装の最上位 | 略礼装の上位 |
| 紋位置 | 背・両胸・両外袖 | 背・両外袖 | 背のみ |
| 主なシーン | 親族の婚礼・叙勲・式典 | 親族ゲスト・主賓・入学卒業式の母 | お祝いの会食・観劇の晴れ席 |
| 紋の種類 | 染め抜き日向紋が基本 | 染め抜き日向紋推奨(縫い紋可) | 縫い紋可 |
| 比翼 | 白比翼で格を上げる | 付けても良いが必須ではない | 通常付けない |
| 帯 | 丸帯相当または格高の袋帯 | 格の高い袋帯 | 上質袋帯 |
五つ紋は第一礼装相当
五つ紋の色留袖は、地色こそ黒ではないものの、格式は第一礼装に匹敵します。婚礼では親族側の最も近い立場や、叙勲・授賞・公式式典での正礼装としてふさわしい選択です。紋は染め抜き日向紋を基本とし、白比翼を付けると典礼度が上がります。帯は格の高い袋帯か丸帯相当の重厚な織、帯締めは平打ちの格高のものを選び、末広や金銀の品位ある草履・バッグで格を揃えるのが鉄則です。
三つ紋は準礼装の最上位
三つ紋の色留袖は準礼装の最上位に位置し、親族ゲストや主賓、仲人夫人、式典参列など幅広く対応可能です。染め抜き日向紋が推奨ですが、場や地域により縫い紋でも礼を失しません。比翼は任意で、白の重ね衿で疑似比翼にまとめても良いでしょう。帯は格の高い袋帯、帯揚げ帯締めは白や淡色ベースで清潔感を出し、金銀の控えめな光沢で品良くまとめると、格式と華やぎのバランスが取れます。
紋の種類と入れ方の基礎
紋には染め抜き日向紋、染め抜き陰紋、縫い紋、貼り紋があります。最も格が高いのは染め抜き日向紋で、五つ紋ではこれが基本。三つ紋では染め抜き日向紋が理想ですが、状況により縫い紋も用いられます。貼り紋はレンタルや臨時対応で一般化していますが、最上位の場では染め抜きが安心です。紋の位置は五つ紋が背・両胸・両外袖、三つ紋が背・両外袖で、肩山のバランスが整うよう専門店での位置決めが推奨されます。
五つ紋の色留袖がふさわしい場面とマナー
五つ紋の色留袖は典礼性が高く、婚礼の親族席や叙勲・授賞式、格式ある式典に最適です。装い全体の格合わせが重要で、帯は格高の袋帯か丸帯相当、帯締め帯揚げは白を基調に金銀を効かせ、白比翼で襟元を引き締めます。文様は松竹梅、鶴、御所車などの慶事文様が安心。色は深みのある寒色から柔らかな中間色まで幅広く、写真映えや会場照明も考慮して選びます。
母親の装いとして選ぶ際は、黒留袖との調整を含めた事前確認が肝要です。
近親者の婚礼での可否と確認事項
婚礼での近親者ドレスコードは地域性が強いため、母親が色留袖五つ紋を選ぶ場合は、新郎新婦双方の意向、式場のガイドライン、親族全体の統一感を必ず確認します。黒留袖が推奨される会場も多く、媒酌や主催側の役割がある場合は黒留袖が第一選択になりやすいのが実情です。色留袖を選ぶなら、白比翼と染め抜き日向紋、格高の袋帯で格に不足のないコーディネートに整え、写真全体のトーンも含めて事前に共有しておくと安心です。
式典・授賞・叙勲での装い
叙勲や授賞式、表彰式などでは五つ紋の色留袖は厳粛さと華やぎの両立に優れ、ホールの照明下でも上品に映えます。帯は唐織や錦織など格の高いものを選び、帯幅の張りが出る芯遣いで貫禄を表現。草履とバッグは金銀の礼装用で統一し、真珠や控えめな貴金属でまとめます。ヘアは面の整った夜会やシニヨンが無難。場内移動が多い場合は裾裁きと草履の高さのバランスも実務的に調整しましょう。
- 事前に両家と会場に装いを共有
- 紋は染め抜き日向紋、白比翼で格を担保
- 帯と小物は金銀基調で統一し過度な装飾は避ける
三つ紋の色留袖が映えるシーンと着こなし
三つ紋は準礼装の最上位で、親族ゲストや主賓、仲人夫人、式典参列、入学卒業式の母など幅広い場面に対応します。格は十分に高い一方、地色や柄で軽やかさを表現できるのが利点。帯は格の高い袋帯、帯揚げ帯締めは白や淡色を基調に、金銀を控えめに添えると程よい華やぎに。比翼は必須ではなく、白の重ね衿で端正さを補えば機能性と美観のバランスが取れます。
文様は松竹梅や熨斗目、扇面など慶事性の高いものが安心です。
親族ゲストや主賓としての判断基準
三つ紋は親族ゲストや主賓の立場でとても使いやすい選択です。新郎新婦の母より一段控える必要がある場合にも、地色の華やぎで晴れやかさを保ちつつ礼を尽くせます。主賓スピーチがある場合は、帯や小物を上質にして格を明確に示すと安心。親族内で黒留袖と色留袖が混在する場合は、全体の色調や写真のまとまりを意識し、金銀の光り具合を控えめに揃えると上品に整います。
帯と小物の格合わせ・季節感
帯は錦織や唐織の袋帯で慶事文様を選び、帯締めは平打ちまたは冠組の格高タイプ、帯揚げは白系縮緬で清潔感を。季節感は強く出し過ぎず、通年の吉祥文様を選ぶと安心です。草履とバッグは金銀ベースの礼装用でまとめ、ヘアはまとめ髪を基本に簪は貴金属系で控えめに。重ね衿は白か淡色一枚重ねで端正に見せ、必要に応じて伊達衿の色で地色を引き立てます。全体のトーンを2色程度に抑えると格調が上がります。
迷った時の選び方チェックリストと最新事情
紋数の判断は、立場・場の格・地域慣習・主催側の意向の四点で整理すると迷いが減ります。近年はレンタルの貼り紋や縫い紋の活用が広がり、実務対応の幅が拡大しましたが、最上位の場では染め抜き日向紋が引き続き安心。比翼は三つ紋では任意、五つ紋では格上げに有効です。スマホ撮影の増加で写真映えの観点も重要になり、会場照明や背景色との相性も選定材料に含めると実感満足度が高まります。
必要情報の整理とヒアリング
以下を事前に整理し、主催側に確認しましょう。
- 自分の立場 親族の続柄 主賓か否か
- 会の性格 挙式か披露宴か 式典か祝賀会か
- 会場のドレスコードと地域慣習
- 親族内の装い統一方針 黒留袖との兼ね合い
この情報が揃えば、五つ紋にするか三つ紋にするか、比翼の要否も自ずと定まります。共有は文章や写真で行い、地色や帯のニュアンスまで可視化すると齟齬を防げます。
最終判断のフローチャート
- 自分の立場が主催側または最親等に近い 五つ紋を第一候補に
- 主賓または親族ゲストで厳粛な場 三つ紋を基本に比翼や帯で格上げ
- 会場が黒留袖推奨 母親は黒留袖優先 色留袖は事前合意を得て採用
- 紋の種類は 五つ紋なら染め抜き日向紋 三つ紋は染め抜きが推奨 縫い紋は場に応じて
- 帯と小物は 金銀基調で統一し過不足を調整 写真映えも最終確認
この順に判断すれば、大きな誤りは避けられます。迷う場合は、会場プランナーや着付け師、きもの専門店に具体的な場面を伝えて相談するのが近道です。
- 重ね衿で白を差すと比翼なしでも襟元が引き締まる
- 帯は六通柄が座礼でも安心 全通柄はさらに万能
- 貼り紋は便利だが最上位の場では染め抜きが無難
まとめ
色留袖の五つ紋と三つ紋の違いは、場の格と自分の立場を的確に表すための言語です。五つ紋は第一礼装相当で、親族の婚礼や叙勲・授賞など厳粛な場に。三つ紋は準礼装の最上位として、親族ゲストや主賓、各種式典に幅広く対応します。紋の種類は五つ紋なら染め抜き日向紋が基本、三つ紋は染め抜き推奨。比翼や帯・小物の格合わせで微調整し、会場や親族内の統一感を事前に共有できれば安心です。
迷ったら立場と場の性格を基準に紋数を決め、紋の種類と比翼、帯小物で過不足を整える。この手順で、礼を尽くしながら自分らしい華やぎを実現できます。