暑い夏の風物詩である浴衣は、シーズンが終われば大切にしまい込む必要があります。クローゼットで保管するのが一般的ですが、湿気や直射日光、折りジワなどが浴衣を痛める原因になりがちです。次のシーズンも美しく着られるよう、クローゼットでの正しい浴衣の保管方法と便利な収納アイデアをご紹介します。
目次
浴衣の保管方法とクローゼットでの収納アイデア
浴衣は綿や麻などの天然素材が使われることが多く、湿気に弱い性質があります。また、たたみジワもできやすいので、保管環境を整えることが大切です。クローゼット内は空気がこもりやすいため、除湿シートを敷いたり、乾燥剤を置いたりして湿気対策をしましょう。直射日光が当たる場所に置くと色褪せの原因になるため、遮光できる布カバーなどを使うのもおすすめです。保管方法には大きく分けて「吊るす収納」と「畳んで収納」の2種類があり、それぞれメリットとデメリットがあります。
| 保管方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| ハンガーで吊るす | シワになりにくい、取り出しやすい | 肩に形がつくことがある、収納スペースを取る |
| 畳んで収納 | 省スペースで複数枚保管可能 | 重ねすぎるとシワや型崩れの恐れがある |
ハンガーで吊るす場合は、衣装専用の幅広ハンガーを使うと浴衣への負担を減らせます。肩の部分に柔らかい布を巻いたり、ハンガーに厚みのあるものを使うと肩跡がつきにくくなります。また、通気性の良い布カバーで覆えばホコリや日光から守れます。逆に畳む場合は、たとう紙(和服用の包装紙)で包んだり、湿気を吸う布を一緒に入れておくと安心です。ただし浴衣を重ねて収納する際は、重さで下のものにシワがつかないように注意しましょう。
クローゼット内の環境を整える
クローゼットは直射日光を避けられますが、密閉されることで湿気が溜まりやすい場所でもあります。まずはクローゼット内の湿度を調整するために、吊り下げ型の除湿剤やシートタイプの乾燥剤を取り入れましょう。除湿剤はクローゼットの天井付近に設置したり、衣装ケースに入れると効果的です。湿気だけでなく、タンスの下部など暗い場所はカビが発生しやすいので、定期的に扉を開けて空気を入れ換える習慣をつけましょう。
また、収納スペースに余裕を持たせることも大切です。浴衣はできるだけ複数枚を重ねず、ゆとりをもって置くと型崩れを防げます。壁に密着させる収納は湿気がこもりやすくなるので、タンスやクローゼット本体は壁から少し離して置くのがおすすめです。
浴衣をシワなく畳む方法
浴衣を畳むときは、元の折り目を活かしながら慎重にたたみます。まずは浴衣の袖を内側に折り込み、左右が重ならないよう床の上に均一に広げます。次に前合わせを整え、襟がまっすぐになるように畳んでください。たたんだ状態ではたとう紙で包んで保管すると、さらにシワと湿気を防げます。
たとう紙は湿気をある程度吸収するため便利ですが、長く使っていると茶色く変色することがあります。タトウ紙は定期的に新しいものに交換し、湿気を吸いきっていない状態を保ちましょう。古いたとう紙からは湿気が衣類に移ることがあるので、交換の目安は2〜3年ごとです。
吊るし収納のポイント
浴衣をハンガーで吊るす場合は、洋服用よりも幅広で厚みのある和装ハンガーを使うとよいでしょう。肩が広い形のハンガーで肩のラインを支えると、長時間吊るしても肩部分が伸びにくくなります。長襦袢なども同じハンガーに掛ければ、次回着用時にセットで取り出せて便利です。
ハンガーに掛けた浴衣は、通気性の良い布製のカバーや専用のきものカバーを付ければホコリや虫食いから守れます。ただし、通気性の悪いビニールカバーは内部に湿気が溜まりやすいので避けましょう。また、クローゼットの棚や引き出しに入れる際は、浴衣を直接触れさせずに不織布や薄手の布で包んでおくと安全です。
浴衣をクローゼットで保管するメリットと注意点

クローゼットで浴衣を保管する最大のメリットは直射日光を避けて保管できることです。日光による色あせを防ぎ、急な来客やイベント時にも素早く取り出せる利便性があります。家具の中にしまうことでホコリを防げる点も魅力です。また室内のクローゼットなら温度変化が比較的穏やかで、安定した環境が保ちやすいと言えます。
しかし、クローゼットはドアを閉めることで空気循環が止まりがちなので、湿気がこもりやすいという注意点があります。換気の悪い場所に置くとカビやニオイの原因になるため、湿度計を置いて目安にするのも良いでしょう。クローゼットを設置する場所にも注意し、キッチンや浴室の近くは避けるのが理想です。
クローゼット保管のメリット
・直射日光を避けられるため、浴衣の色あせや型崩れを防げる。
・空調の効いた室内では温度・湿度が安定しやすく、衣類に優しい環境になる。
・重たい押し入れよりも高さがあるため、衣装ケースやハンガーを使って衣類を効率よく収納できる。
クローゼットを上手に使えば、普段使いの洋服と一緒に収納しながらも浴衣の管理がしやすくなります。季節物の衣類用に専用のスペースを作れば、出し入れもスムーズです。
クローゼット保管の注意点
・湿気が溜まりやすく、カビや虫食いのリスクがあるため、除湿剤や防虫剤を活用する必要がある。
・壁にべったりくっつけて置くと通気性が悪くなるため、収納家具は壁から少し離して配置する。
・重いものを上に置くと浴衣がつぶれることがあるので、上段には軽いものや肌着など軽めのアイテムを置くとよい。
また、クローゼット内部に防虫剤を置くときは必ず洋服に直接触れないように注意しましょう。おすすめは引き出しの角や棚の端に吊るすタイプの防虫シートやカバーです。防虫成分は強力なものも多いため、誤って浴衣に当たらないよう十分に距離を取って設置してください。
湿気対策と防虫対策で浴衣を守る方法
クローゼットで浴衣を保管するときは、湿気と虫のダブル対策が必須です。湿気対策には除湿剤や乾燥剤を活用します。シート型の除湿剤をクローゼットの下段に敷いたり、吸湿ポリマーをタンスに入れるのも有効です。特に浴衣は湿気に弱いため、吊るし戸の下や引き出しの角などに小型のシートを仕込んでおけば手軽に湿気を除去できます。
自然素材や防虫効果のある場所:
桐のタンスに入れると湿度コントロールに優れ、天然の防虫効果も期待できます。桐タンスの上段は湿気がこもりにくいので、重要な和装アイテムを優先して置きましょう。最近では、特許技術を使った着物用の密閉保管袋も登場しており、酸素や紫外線を遮断してカビや色あせから守るものもあります。こうした収納袋を利用すれば、長期間保管しても安心です。
除湿剤・乾燥剤の使い方
除湿剤や乾燥剤は、クローゼットの棚や引き出しごとに1つずつ置くのが理想的です。ボックス型の除湿剤はクローゼット内にそのまま吊るせるタイプや置くだけタイプがあり、水分が溜まったら交換します。シート状の除湿シートは衣装ケースの底に敷いたり、棚板に貼り付けて使うと便利です。定期的に状態をチェックし、湿ったら速やかに交換しましょう。
また、新聞紙や半紙をタンスの引き出しに敷く昔ながらの方法も有効です。紙が湿気を吸収してくれるので、特に押し入れタイプの収納など布製のものをしまう際に役立ちます。ただし紙自体が湿気でシミを作ることもあるので、入れ替えは半年~1年に1回を目安にしましょう。
防虫剤選びと使用方法
防虫剤は「浴衣・着物専用」または「不織布に防虫成分を含浸させたシートタイプ」が安心です。これらは揮発性が少なく、絹や綿に影響を与えにくい成分が使われています。ナフタリンや樟脳(しょうのう)は匂いが強く浴衣に触れると変色する恐れがあるため、一般的な洗濯洗剤は使用しないことをおすすめします。
防虫剤を使う際は、浴衣に直接触れないようにしましょう。ハンガーに引っ掛けるタイプの防虫シートを使うか、小さなボトル入りの防虫薬剤を衣装ケースの隅に置くと、安全です。異なる種類の防虫剤を混ぜて使用すると化学反応で液化・変色するおそれがあるため、必ず同じ種類のもの1種類だけを使い、使用期限や交換時期を守ってください。
定期的な換気や虫干し
どんなに対策をしても、長期間同じ状態で閉め切っておくのは良くありません。季節の変わり目にクローゼットの扉を開けて空気を入れ換え、浴衣を短時間だけでも陰干しして風を通しましょう。陰干しは直射日光を避けて半日程度が目安です。浴衣に湿気が残っているときは、扇風機やサーキュレーターで風を当ててしっかり乾燥させてからしまいましょう。
また、年に1〜2回は浴衣をタンスから出して虫干しをするのも効果的です。梅雨明けや秋口の晴れた日に、通気性のある場所に干して湿気を飛ばします。このときも浴衣が紫外線に長時間当たらないよう注意し、直射日光ではなく陰干しで乾かすのがコツです。
季節ごとの浴衣の保管方法と眠らせ方
浴衣は夏の着物のため、使用後は次の夏までの長期間眠らせる必要があります。シーズンオフに入る前に、まず着用中に付いた汗や汚れを落とすために洗濯やクリーニングを行いましょう。洗濯機で洗う場合は、ネットに入れて裏返しにし、優しいモードで洗ってください。洗った浴衣は形を整えてから陰干しでしっかり乾かし、完全に湿気を飛ばした状態で保管します。
しわや湿気がなくきれいな状態で保管することが、次シーズンの着用前に楽に取り出すコツです。浴衣を洗わない場合でも、着用後に霧吹きで湿らせたタオルを当てて軽くたたくようにして汗を拭き取り、風通しの良い場所でよく乾かしておくことを忘れないでください。
洗濯・クリーニング後の準備
浴衣は綿や麻の素材なので自宅で洗濯可能なものが多いですが、刺繍や特殊加工がある場合は専門店でクリーニングするほうが安心です。いずれの場合も、洗い終わった浴衣は吊り干しや陰干しでしっかり乾かします。完全に乾いたらアイロンをかけてシワを伸ばし、形を整えておくと長期保管中もシワが付きにくくなります。
乾燥後は、浴衣を畳むかハンガーに掛けるかを決め、たとう紙や不織布で包んでからしまいましょう。帯や帯揚げ、肌着など付属品は別にクリーニングし、セットにして袋にまとめておくと、次回着用時に紛失しにくくなります。
オフシーズン中の収納ポイント
オフシーズン中は長期間手を加えないため、なるべく安定した環境で保管することが重要です。湿度の高い季節や温度変化の大きい場所は避け、クローゼットの上段や冷暖房の影響を受けにくい部屋に設置すると良いでしょう。収納箱や衣装ケースに入れるときは、除湿剤や防虫剤と一緒に入れておくと安心です。
もし使用するのであれば、真空パックのような密閉収納袋で空気を抜く方法もあります。しかし、素材への負担や折りジワに注意が必要です。空気を抜いたあとは年に数回袋を開けて換気し、湿気が溜まっていないか確認しましょう。基本的には空気を遮断せず、通気性のある収納袋のほうが浴衣には優しいと言えます。
再び着用する前のチェック
翌年の夏に浴衣を着る前には、保管していた浴衣の状態を必ずチェックしましょう。取り出してみてカビ臭くないか、シミや虫食いの跡がないかを確認します。もし汚れが気になる場合は前もってクリーニングに出し、一度しっかりと洗うと良いでしょう。
また、帯や小物も同様に点検しておきます。虫食いが見つかったら、初期であれば家庭用のリントローラーでとれることもありますが、大きな穴の場合は専門の修繕が必要です。できるだけ早めに対処し、被害の拡大を防ぎましょう。万全の準備が整ったら、アイロンや手でシワを伸ばし、すぐ着用できる状態で置いておくと安心です。
浴衣収納に便利なグッズ・アイテム
浴衣の保管には専用の収納アイテムを使うとさらに便利です。シンプルなものであれば、衿や袖を掛けられる和装ハンガーや、不織布製の衣装カバーなどが挙げられます。これらはネット通販や呉服店でも手に入り、浴衣専用に設計されたものが増えています。
座敷にかけずにしまう場合は、衣装ケースやクリアボックスを活用するのも一つの方法です。透明なボックスなら中身が見えるため何が入っているか分かりやすく、引き出し型なら横型に整然と並べて収納できます。ただし、プラスチックケースは通気性があまり良くないので、使う場合はこまめに除湿剤を交換しましょう。
浴衣専用ハンガーと収納ケース
- 和装用の幅広ハンガー:肩幅が広い浴衣専用ハンガーは、型崩れや肩跡を防げる設計です。木製のものや滑り止め付きのものが人気です。
- 洋服収納ケース・衣装ケース:浴衣を畳んで収納する際に便利です。引き出し式やクリアタイプを選ぶと、中身が確認しやすく出し入れが楽になります。
- 収納袋・防カビシート:通気性のある布製の収納袋に入れるとホコリや日光を遮断できます。防虫シートや乾燥剤を一緒に入れておくとより安心です。
これらのアイテムを組み合わせて使うことで、浴衣の保管がより効率的で安心になります。使用するグッズはすべて清潔な状態で、新品または十分に乾燥したものを使用するよう心がけてください。
防虫・防湿グッズ
- シートタイプの防虫剤:クローゼットに吊るせる小型の防虫シートは、匂いがつきにくく浴衣を傷めにくい特徴があります。
- 乾燥剤・除湿剤:押し入れや衣装ケースに入れるボックスタイプの除湿剤、シート状の乾燥剤などを活用し、クローゼット全体の湿度管理を強化します。
- 防虫カバー・アロマ:ラベンダーや樟脳(しょうのう)などを含んだ防虫サシェ(香り袋)を入れておけば、自然の香りで虫を寄せ付けず、香りも心地よく保てます。
特に長期保管する場合は、防虫・防湿グッズの併用が効果を高めます。不織布の小袋にラベンダーを詰めたり、防虫効果のあるハッカなどのエッセンシャルオイルを布に染み込ませてボトルに入れる方法も、優しい香りを楽しみながら虫よけができます。
収納スペースを節約するアイテム
- 収納ボックス・仕切り:まとまった枚数の浴衣や帯をコンパクトに保管するなら、仕切りが付いた収納ボックスが便利です。衣替え時にまとめて入れられます。
- 吊り下げラック:クローゼットバーに取り付ける吊り下げラックは、掛けられる浴衣の枚数が増え、省スペースながら整理整頓が可能です。
- 衣類圧縮袋:長期間しまう場合は圧縮袋で空気を抜く方法もありますが、前述のとおり頻繁に開けて湿気を入れかえる必要があります。使う場合は、折りジワが目立たない場所で軽くたたんでから圧縮すると良いでしょう。
これらを上手に活用すれば、査国のスペースを無駄なく使いつつ浴衣の状態を良好に保てます。使いやすいアイテムを揃えて、大切な浴衣をいつでもキレイな状態で取り出せるようにしておきましょう。
まとめ
浴衣を美しく長持ちさせるためには、シーズンオフ直前の洗濯・乾燥と、年間を通じた適切な保管環境が不可欠です。クローゼットで保管する際は、湿気・カビ防止のために除湿剤や風通しを工夫し、シワをつけないよう丁寧に収納しましょう。防虫対策も忘れずに、浴衣専用グッズを活用して丁寧にしまえば、来年の夏も鮮やかな浴衣姿を楽しめます。正しい方法で保管して、大切な浴衣の美しさを守り続けてください。